ニュースの概要
短編動画プラットフォーム「TikTok」の読書コミュニティ「BookTok」で人気を集めた作品60本が、映像化の有力候補として急速に増えている。報道によれば、Prime Videoが手がける『The Last Sunrise』は8月26日に公開予定で、A24やAmazon、Netflixといった主要プレイヤーがPaperbacks発のタイトルを続々と買収している。TikTokのバイラル効果を起点に、これまで映像化の枠組みから外れていた小説群が、映画やドラマとして世に送り出される流れが本格化した。出版業界と映像業界の距離が、これほど短くなった時代はかつてない。
引用元: BookTok人気作60作品の映像化が加速、配信・映画化の案件が拡大(Reuters)
分析・見解
TikTok発のタイトルが映像企画の「本命」になった構造変化
BookTokの影響力を語るうえで重要なのは、話題量そのものではない。実際に購買行動-「BookTok効果」と呼ばれる現象-として定着しており、紙のペーパーバック売上を押し上げている。BookTokでバズった作品は、例えば『The Love Hypothesis』(Ali Hazelwood)や『Fourth Wing』(Rebecca Yarros)のように、発売後に爆発的に部数を伸ばすケースが多い。つまり、配信プラットフォームや映画スタジオが獲得しているのは、すでに熱心なファンを抱える完成済みのIPということになる。脚本開発やテストマーケティングのコストを大幅に削減できる点が、彼らを動かす最大の理由である。
『The Last Sunrise』8月公開が示す配信各社の本気度
8月26日にPrime Videoで公開される『The Last Sunrise』の動きは象徴的である。ロマンスやファンタジーといったBookTok强勢ジャンルの中でも、比較的新しいタイトルを即座に映画化へ投入するスピード感は、従来の出版-映像化のタイムラインを大きく短縮している。出版契約から映像公開まで数年かかるのが常識だったが、AmazonはBookTokタイトルを「埋蔵資産」ではなく「即戦力」として扱う方針を打ち出している。結果として、話題が冷める前に映像化して、新規ファンを取り込むループが生まれる。
従来のロマンス映像化と異なる、ファン起点の作り手選び
近年話題になった映像化作品を見ると、必ずしもベストセラー常連ではない新進作家が抜擢されているケースが目立つ。これは公開前からSNSでコミュニティが形成されており、著者本人と読者が近い距離にいることが大きい。従来の映像化は「知名度の低い作家はリスクが高い」というのがおおよその共通認識だったが、BookTokは読者自身が著者や作品を宣伝し、配信プラットフォームがそれを「予約済み需要」として読み替える構造をつくった。
配信プラットフォーム間の競争が、出版契約の条件を押し上げている
A24、Amazon、Netflixなど複数社がBookTokタイトルを奪い合う状況になれば、出版側にとって有利な契約条件を引き出しやすくなる。映像化権の一括売却ではなく、窓口契約やシリーズ権の段階的取得といった柔軟なかたちが広がるだろう。作家にとっては印税・配信比率の交渉力が強まり、出版社にとっては映像化を軸とした営業戦略の再構築が必要になる。
ビジネスへの影響
小規模ブランドのタイアップ獲得機会が拡大
BookTok発の映像化作品が劇場・配信を問わず増えていく流れは、関連する周辺ビジネスにとって追い風となる。配信プラットフォーム主導の作品が増えることで、衣装・ジュエリー・アクセサリー・生活雑貨といった比較的小規模なブランドが、作品内のスタイリングや小物として公式に採用されるチャンスが広がる。BookTok発の作品の読者層は10代後半から30代の女性を中心に厚く、彼女たちが実生活で身につけるアイテムへの関心も高い。制作チームとの交渉窓口を持つ代理店や、文化系クリエイターにとっては、新規取引先の開拓余地が生まれている。
出版とファッションを横断する商品開発の余地
映像化のタイミングに合わせて、原作の世界観を反映したコラボ商品や限定版を発売する事例が増えるだろう。例えば、物語のキーワードとなるモチーフを落とし込んだジュエリー、表紙デザインを再現したステーショナリー、登場人物の着用をイメージしたカラー展開のコスメや小物といった、出版と物販を横断する商品企画が考えられる。映像化のニュースが出る前の「予兆期」から売り出すことで、早期に話題を拾う戦略もとりやすい。
自社のファッションブランドやコンテンツをBookTokと連動させる視点
BookTok発の映像化作品が増える時代において、自社ブランドやコンテンツを持つ側は「映像化される側の読者」にとどまらず、「映像化の盛り上がりに乗る側」として動く発想が必要になる。例えば、BookTokで強い支持を集めるジャンルであるロマンスやファンタジーの世界観からインスピレーションを得た商品ラインを設ける、あるいは、特定のBookTokタグが付いた投稿と連動した色をシーズンカラーとして採用するといった、データ起点の企画設計が考えられる。映像化の公表スケジュールを把握し、関連作品の公開前にSNSキャンペーンやポップアップを仕掛けることで、話題の流れに自然な形で入り込むことが可能になる。